二度と振り向く事なくリングを降りていく翡翠。

その背中を見ながら。

「参ったな、こりゃ…」

疾風は苦笑いする。

武の世界とは、『智』のみで渡っていける世界ではない。

そう突きつけられたかのようだった。

『文武両道』という言葉があるが、別の意味でもそれは武の世界に通ずる事なのだ。

そして、一度は刃を交えた相手にそれを語る翡翠。

やはり彼は教鞭を執る教師なのだと、今更ながらに思い知らされた。