私の家は物心ついた時から父子家庭だった。

お母さんは私を産んですぐに、交通事故に遭って死んでしまったらしい。


父子家庭といっても私とあの人との間に関わりはほとんどなく、一軒家に独り暮らしをしている状態だった。


あの人はいつも仕事ばかり。
家族は二の次。

私もあの人の顔なんて見たくもなかったから、せいせいしてたというのが正直なところ。



そして、そんな反抗期な私を心配したおじいちゃんは、よく家に泊まりに来てくれた。

おばあちゃんは私が産まれるずっと前に死んでしまっているから、遺影ぐらいでしか顔は見たことない。


おじいちゃんはただ優しいだけではなくて、私が間違ったことをすると叱ってくれる、あの人よりも父親のような存在。

そして私の絶対的な味方でもある。


私はおじいちゃんの背中を見て育ったのだ。



「おじいちゃん…!」



無意識の内に、おじいちゃんに飛び付く。

力の限り抱き締めて胸に頭をくっつければ、ほっほっほっと独特の笑い声が直接耳に響いた。