ゆっくり視線をリツィリアさんに戻すと、彼は微笑んでいた。



「わ、かる…?」

「ああ、分かるよ。本当に、辛いだろう」



違う。
辛いなんてものじゃない。

これは“絶望”だ。



途端に、かっと猛烈な怒りが沸いてきた。
シャボン玉が破裂するように。
今まで溜まっていたものが爆発するように。激しく。


その勢いに任せてリツィリアさんの手を振り払った。



「私の気持ちが分かる?ふざけるな…!
私の気持ちを誰が分かるっていうの!だってここは日本でなければ地球でもない!…それに、夢でもないの!これじゃあまるで…」



まるで。


――――異世界



リツィリアさんをきっと睨む。
初めて金色の瞳をまっすぐに見て、綺麗だと思うと同時に憎らしさが込み上げた。



「誰にも私の気持ちなんて分からない。安い同情なんてしないでよ!」



そう叫んで、私は部屋を飛び出した。


耐えきれなかったのだ。

金色の瞳が全てを見透かしているようで。
容赦なく私を責めているようで。

彼の心配する気持ちを踏みにじった私は最低なんだと。