夢ならいつかは覚める。

覚めたら、みんな元通りだ。



たぶん、私は今柚子と同じベッドの中にいて。

二人で夜通し話しすぎたせいで疲れて、それでこんな変な夢を見ているんだ。


目が覚めればみんな消えるはず。

後ろにいるリツィリアさんも、こんな変なお城も。みんな。



「そうだよ、これは夢だ。君は今、長い夢を見ているんだ」



私の考えを後押しするリツィリアさんの声が、私の心にするりと入ってきた。

でも、リツィリアさんの低めの穏やかな声や、腰と背中に感じる温度が、彼は紛れもなく命あるものなんだと私に教える。


夢だと信じるには今の彼は優しすぎた。
浮気宣言の時みたいに最低なままでいてくれたらまだ、夢だと信じられたのに。


直前まで彼に感じていた恐怖は薄らいでいく。でもその代わり、虚しさがじわじわと広がっていった。



やっと少し落ち着くことができた私は、いつの間にか腰に回ったリツィリアさんの腕に手を置いていて、力を込めすぎるあまり爪を立ててしまっていた。