どんなに私を捕らえる腕を引っ張っても、リツィリアさんはびくともしない。

逆に、私が力を込めれば込めるほど彼の腕にも力がこもって、さらに引き寄せられる。



その間、彼は「大丈夫」と穏やかな声音で何度も囁いて、私を落ち着かせようとしてくれる。

でも私にとっては後ろにいる彼自体が恐怖の対象。


疲れからか身体中がぎしぎしと痛んだけど、私は抵抗し続けた。



「や、だ…やだっ!
放してよ…柚子っ助けてっ」



柚子に助けを求めても無駄だと、なんとなく分かっていた。

奇跡的に繋がった電話や、さっきの悪夢が、柚子はここにいないんだと私にまざまざと突き付けてきたから。



けれど、それでも彼女に助けを求めずにはいられないのは。

これも悪夢の一部で、目を覚ませば隣に柚子がいるはずだと信じているからかもしれない。



「夢…
そうだ、夢なんだ…」



私はその可能性にはっとした。