それにしても、疲れた。

私は額にたらりと流れる汗を拭きながら、暴れまわっている心臓を鎮めるべく深く息を吸った。


まだ、身体中の筋肉が硬直している。

動かせば、ぎしぎしと音をたてそうだ。



そんな私を見て、柚子はため息を一つ。



「そんなに楽しくない?このパーティー。…あたしだってそこまで楽しくはないけど、もうちょっと笑いなさいよ。
仏頂面だと誰も誘ってくれないわよ」



ねえ、誠司。と隣の彼に同意を求めている。

誠司さんはというと、苦笑いでスルー。



そんな、私だってそれなりに楽しんでます!……料理を、だけど。



「誘われなくてもいいの、料理美味しいし」

「……はあ、全く仕方ないわね。じゃあ先に部屋に行ってる?あたしはパパに最後までいろって言われてるから、一緒にはいけないけど」



そう言って差し出された犬のキーホルダーが付いている鍵を、私は凝視した。


…うそ……



血の気が一気に引いていく。
ただでさえ顔色が悪いのに、もう顔面蒼白になっているんじゃないだろうか。