――――…‥



「っ―――!」



私ははっと閉じていた瞼を押し上げた。



「陽花、どうしたの?そんな怖い顔で」

「ゆ、ず……」



一瞬、何がどうなっているのか分からなかった。



あれ?私……



さっきまでは暗い廊下にいたのに、今はシャンデリアの光が辺りを照らすホールの中にいた。


そして、目の前には会いたくて会いたくて仕方なかった柚子がいる。

その隣には誠司さん。後ろには楽しげにダンスを踊る会社員の人たち。

たまに茶髪もいるけど、彼らの髪はみんな黒い。



どうやら、伊庭家のホールのようだ。

私は壁にもたれて立っていた。


ああ、なんだ…夢だったのか……




夢の中の状態がそのまま係属されているようで、心臓はばくばくと脈打ち、指先はまだ震えていた。



「ちょっと、汗すごいわよ」



そう言ってハンカチを差し出してくれる柚子。

もう、涙腺が緩みそうだ。



「あ、ありがと」

「ねえ。本当に、どうしたの?」

「なんか怖い夢、見て…」

「立ちながら寝てたの?…器用ねぇ。その器用さを学習にも活かせばいいのに」

「うるさい」



小馬鹿にした口調に反して優しく笑う柚子に、私も少し笑う。