私は正直うんざりしていた。


前日まで楽しみで楽しみでしょうがなかったのに、いざ来てみると全然楽しくない。


香水の臭いはキツいわ。

普段はきなれないピンヒールのせいでこけそうになるわ。

その上、柚子に借りたドレスが露出度高くて、私の幼児体型がバレバレになるわ。



…楽しいことが一つもない。

こんなブスッとした機嫌悪そうな女、誘う人もいないだろうし。



「はあ…」



知らずについてしまうため息は仕方ないと思う。


すると、下を向いていた私の視界に濃い青色のドレスの裾が侵入してきた。



「なーに壁の華決め込んでんのっ」

「あ、柚子」



顔を上げればほらやっぱり。


にやにや顔の美人さんと、爽やかなお兄さん。



「もっと楽しみなさいよ。せっかく貸したドレスも、あたしがやってあげたメイクも台無しじゃない」

「ごめんね、似合わなくて」

「違うわよ、そんな不機嫌な顔じゃ駄目よってハナシ」



ぷいっとそっぽを向く。

仕方ないじゃん、楽しくないんだから。