そう、今日は舞踏会という名の仮装パーティーである。

現代日本にそんなものがあるのか、と最初は驚いたけれど、友人である柚子の父親が主催したって聞いてフツーに納得。


彼は県内でも有数の資産家で、かつ中世ヨーロッパオタク。



例えばこのドでかいホールがある屋敷の廊下には、まるでファンタジー世界みたいに両刃の剣を持った鎧が並んでいる。

それはもう、先が見えないぐらいに。


あんなにたくさんの物、どうやって集めたのかと柚子に聞いてみれば、特注で作ったと返ってきた。


…一瞬くらっときてしまうのは私だけじゃないと思うの。




私は優雅なピアノのメロディーを聞きながら、壁際に寄って辺りを眺めまわしていた。



視界に入るのは原色のドレスや黒色の燕尾服の人混み。

彼女たちの胸元を飾っている宝石は、シャンデリアの光をちかちかと跳ね返している。