負けじと言い返したら、彼女――ヴェレーナはあからさまにむっと顔を歪めた。
「その名前で呼ぶな」
「でもあなたの名前でしょ?」
ヴェレーナはそれはそうだけど…と言って、押し黙る。
どうやら自分の名前が好きではないらしい。
いかにもお姫様って感じの名前だから嫌なのだろうか。
口調もなんだか男っぽいし、もしかしたら女に生まれたくなかったとかそういうパターンなのかも。
「………ヴェル」
「え?」
「親しい人たちは俺をそう呼んでる」
「…つまり、私にそう呼べと?」
ヴェルはこくこくと頷いた。
その姿に口の端がちょっとだけ緩む。
だって、まるで素直になりきれない小さい子供みたいなんだもの。
俗に言うツンデレ。ただしツンとデレが同時に発動するやつ。

