「お願いだ、落ち着いてくれ!」



そう言った彼を押しのけようと目の前の肩らしき場所に手をついたその時、私に救いの手が現れた。


こんこん、



「ヴェレーナ様?いらっしゃるのですか?」

「んっ――!」



ここぞとばかりに悲鳴をあげようとしたら、口を塞いでいた手が鼻も塞ぐ。

息の逃げ場が無くなって、少しも声をあげることができない。

いっこうに大人しくしようとしない私に痺れを切らしたのか、少年はいくぶん低い声で囁く。



「大人しくしろ!殺されたいのか」



さっきと言ってること違うじゃない!と猛烈に怒りが湧いたけど、このままだと本当に殺されかねないから、大人しく従うことにした。


暴れていた手足をゆっくり下ろして、少年の問いかけに小さく首を振って答える。


私の意図に気が付いたのか、彼は鼻のところだけはずしてくれた。


これで息は確保。

私は大きく息を吸い込んだ。