携帯を持った手にぎゅっと力を込める。


「バカみたい」


そう、私にはその道しか残されていなかったのに、まだ淡い期待は捨てきれずにいた。


もう一度、元の世界と繋がることができるんじゃないか。
手の中にあるこの冷たい物体が震えるんじゃないか、と。




そんな自分がすごく嫌だ。

都合の良い期待だけは捨てられない弱い自分が。




「……ばか、みたい」


もう一度呟いた声は、弱々しく掠れていた。

そして、膝をさらに深く抱え込むことで、複雑に渦巻くこの感情を閉じ込めた。







――――これが長い長い一日の終わり。新たな日々の始まりだった。