「 ・・・・ありがとうございます 」 目に涙を浮かべた葵は 美夏にそう言って笑顔を向け、 「 私、きっと話せませんでした 」 ”だから、ありがとうございます” 葵のありがとうは、美夏の思いに 対してじゃなく、話す機会を 与えてくれたことに対しての ”ありがとう”だった。 前髪を片手でかき上げ、 こみ上げてきそうな涙を押し殺す。 「 ・・・一条先生 」 「 ん? 」 「 私、もう大丈夫です 」 本当に、葵は強い。