「 葵ちゃん! 」


「 ・・・はい・・? 」


「 ・・・・泣いてんの? 」





佐野くんの指が頬に触れて
私の涙をそっと拭った。





「 ・・・・俺にしとけば? 」





卒業式の後だからか、
泣いている生徒が多くて
その中の一人だと思われたのか
他の生徒は大して気にもしていなかった。





ただ、私には彼がいるのに
何で私の涙を拭うのが
彼じゃなく、佐野くんなのか。





全身に突き刺さる視線が
そう言っていた。