藤宮の前衛の選手のラケットが手から抜け落ちた。

 「4-1で海葉の勝ちです。」

優奈がごくりと唾を飲むのが聞こえた。

試合時間は…30分。

決勝にしては短い時間だ。

 「さすが中島。」

 「大庭さん、途中で後衛にまわって
  ましたね。」

2セット目までは前衛としてプレーしていた大庭さんが、3セット目になって後衛としてプレーしだした。

相手の選手はそれに惑わされてしまって、そこからは大庭さんたちのペースだった。

 「気をつけておいたほうがいいか
  もね。」

先輩がノートに何かを書き込んだ。

 「気張ってけよ!梨々香!」

 「はい!!」

背中がゾクッとした。

梨々香ちゃんだ。