「航希君は…勝ちたくないんですか?」

 『勝ちたいよ。
  でも、たまに辛いっていうか…。
  その日、桃林の練習に遊びに行った
  んだよ。
  愛華とかいないから帰ったけど。』

…ああ、そういえば歩斗がそんなこと言ってた。

 『桃林のテニスはいいよね。
  見てるほうも楽しい。
  それってやってる方も楽しいから
  なんだろうなって。』

 「そうですね。
  あたしとかは特に楽しんでやって
  ます。」

…航希君、悩んでるのかな?

あの怖いものなしの航希君が…?

 『俺らは勝てればそれでいいテニス。
  愛華達は見てる人もやってる人も楽
  しいテニス。
  この差、わかる?』

 「わからなくないです。
  …じゃ、航希君は今テニスやって
  て楽しくないんですか?」