「…話になんねぇ。」

そう言って席を立った。

 「律?
  待ちなさい、どこ行くの?」

リビングのドアノブに手をかけた瞬間に母さんがそう言った。

 「…母さんのいないところ。
  ああ、俺は構わないよ。」

 「え…?」

さよなら。

やっぱり俺は…家族とか名誉よりもテニスを選ぶみたいだ。

 「この家と…母さんと縁を切る
  こと。
  俺は全然構わないから。」

母さんにとって俺は道具でしかないんだろう。

ずっと思ってたんだ。

俺は佐伯家の品格を高めるだけの道具でしかない。

いい学校に行って家を継いで…。

だからそれがなんなんだ?

母さんは俺を人として見れなかった。

ただそれだけの悲しい事実。