「母さん、話があります。」

夕飯の時に俺はそう切り出した。

母さんは俺をチラッと見て眉をひそめた。

 「…高校は藤乃宮に行こうと思う。」

母さんが箸をおいた。

 「今更何言ってるの? 
  草志館って決めたじゃない。」

 「…でも。」

 「でもだとかだけどって律の口癖
  よね。
  とにかくあなたはパパの歯医者
  を継ぐの。
  長男なんだから。」

長男なんて肩書き…いらない。

歯医者なんて俺は継がない。

声にならない思いは胸を締め付ける。

 「テニスが…したいんだよ。
  高校に入って、また皆と…。」

 「いい加減にして!」

母さんはテーブルを拳で叩いた。