「もう、拓ちゃんのことは何も思わんの?」


好き…というか、忘れたい。
でも、忘れられない。


「忘れたいけど…忘れられへん」


正直な気持ちを話すと、余計に胸が苦しくなる。
それと同時に、夏希の目からも…一筋の涙が頬をつたった。


「拓ちゃん、ずっとあずのこと考えてる。
 たまに、りっくんの家で会うたりしててん。
 初めは許されへんかったけど、拓ちゃんの話聞いてたらさ…。
 自分の事情であずを泣かせたって…ずっと、後悔してる。
 …拓ちゃんに、会ってあげてほしい」


夏希の目からは、大粒の涙が溢れていく。

事情って、なに?
どういうこと?…分からん。


「事情…って?」


「あたしからは…話されへん。
 もし、会ってくれるんやったら…拓ちゃんの口から聞いて」