「…龍くん、ごめん」
泣きながらひたすら謝る彼女に、龍はそれ以上聞くことができなかった。
龍くんが背中を撫でてくれたおかげで、落ち着きを取り戻す。
家まで送ってもらい、もう一度、深々と頭をさげた。
「俺とおらん方が…あずちゃんは幸せになれる。
だから、拓馬くんと…」
俯きながら、龍は口を閉じる。
唇にギュッと力を入れ、震えている。
「なんで、拓ちゃんよ。
…別れるってこと?」
「あずちゃん、幸せになってな」
顔を上げ、精一杯、龍は微笑み別れを告げる。
そして、帰って行った。
帰り道、龍は自分のしたことに後悔はないと、自分に言い聞かせながら涙を拭った。
梓紗はその場で立ち尽くす。
龍くん…なんでそんなこと言うんよ。
拓ちゃんの名前、出さんといてよ…。
゛俺が守る゛って、言ってくれたやん。
あれは、嘘やったん?
誰かに話を聞いてほしくて、無意識のまま夏希の住むマンションに向かっていた。
電話をかけると、夏希は力也の家にいるらしい。
仕方なく電話を切ろうとすると、マンションまで『迎えに行く』と言ってくれた。


