「あたしの噂、知ってるよな?」
「…噂は、噂やろ」
力也は平然とした表情で、はっきりと言う。
何でこの人は、こんなにポジティブ思考なんやろ…。
「あたしの家族な、お父さんが…浮気しておらんねん。
1人っ子で、お母さんも仕事でずっと1人やった」
「うん…」
「中学入ってすぐ、彼氏できたねん。
その子との記念日に、約束してたのに急に断られたねん。
理由聞きそこねたから、教室まで行ったらおらんくて…。
いろいろ探して、最後に屋上見に行った」
そこで、一気に涙が溢れてた。
力也は少し戸惑いながら、夏希を優しく抱きしめる。
「おらへんなって思って、出ようとしたら声してん。
聞こえた方に歩いて行ったら…丁度死角になる場所で、あたしの友達と…キスしてた。
そのまま、あたしに気づかんと……ヤり始めた」


