力也は立ち上がり、部屋を出る。
慌てて玄関まで見送りするため、追いかける。
「今日は、ありがとうございました。
なんか…気使わしてすいません」
「あー。お礼やったら、夏希に言うてや。
あいつが心配やからって…言うて来たんやし」
力也は頭をポリポリと掻きながら、視線をわざと逸らす。
「夏希にも、感謝してます」
微笑むと、力也が少し俯いた。
「拓のこと…許したってな」
気まずそうに、でもどこか悲しそうにそう言うと、力也は去って行った。
拓馬くんを…許す?
許すもなにも、あたしは別にひどいことをされたわけじゃない。
勝手に好きになって、勝手に振られただけ。
勝手に傷ついて、悩んでるだけ。
それやのに、力也くんは何を思ってそう言ったのだろうか…。
理解できないまま、部屋に戻った。