そんなあたしの心境を読み取ったのか、龍くんはベランダに出て、ゆっくりと扉を閉めた。
「泣いても、いいから…。
我慢せんとってください」
………ごめんなさい。
必死に堪えたが、その優しい言葉に甘えてしまった。
考えたくないのに考えてしまう。
つらい、しんどい。
優しく抱きしめられる腕を拒めず、彼の腕の中で違う人を想いながら、泣いた。
こんなに泣くほど、あたしはいつのまにか…拓馬くんを好きになってたんや。
あたしは自分に鈍感やな。
ほんま……あほや。
「俺が、あずちゃんを守るから。
無理やったら、今すぐ拒んで…」
ゆっくりと顔が近づいてきて、唇が重なり合う。
龍くんを拒むことなんか、できへん。
あたしには、龍くんが必要やから…龍くんしか、おらん。
たとえ逃げ道だとしても、龍くんに非はない。
拒む理由が見つからず、あたしは龍くんと付き合うことになった。


