少し肌寒くて、冬の名残を優しく感じた。
分かれ道、一旦、自転車を漕ぐ足を止める。
なぜなら、拓馬くんのことを相談したかったから。
このまま気まずいのは、嫌。
いつもなら、すぐにバイバイする筈なのに、不思議に思った夏希も漕ぐ足を止めた。
「どないしたん?
…拓ちゃんと、何かあった?」
図星をつかれ、思わず自転車を倒す。
すぐに自転車を起こすと、ゆっくりと口を開いた。
「あたしとおったら、変なるらしい。
なんか、…懐かしいんやって」
言われたことをそのまま話し、状況を説明した。
夏希は少し黙ったが、すぐに口を開いた。
「誰でも、弱い部分はある。
それを素直にさらけ出してくれたのは、あずを信用してるからやん」
その言葉に、深く納得させられた。
夏希の表情が、少し寂しそうに見えた。
拓馬くんに言われたあの言葉を、気にしないことに決めた。
それが、相手のためであり…自分のためでもある。
このときは、すぐに受け流すことができた。
でも、それは後々、理解しなければならない日がくる。
…このときに、嫌でもこの言葉の意味を、考えた方がよかったのかな?


