振り返り、来た道を戻る。
ベンチにはまだ、…愛しい彼が座っていた。
拓馬は右手で頭を抱え、俯いている。


「…拓ちゃん」


その姿が、妙にに幼くみえた。
名前を呼ぶと、拓馬は顔を上げずに弱々しくささやく。


「なんで…戻ってくんねん」


泣いてる……?

拓馬くんの声が、微かに震えている。


「俺…あほやな。 誰1人、守れてない…」


そんなことない…。
あたしは、拓馬くんに何度も救われたよ。


「守りたい女のそばには、いつもいてやれん。
 …俺、どっかであずに期待してた。
 どんなけ歳取っても、あずだけは俺を…待っててくれてるって。
 そんなん…時間なんか、長いっちゅーねんな。
 ほったらかしにした、俺が悪いんやんな。
 ……自惚れすぎてたわ」


「…そんなこと、ない。
 あたし、ほったらかしにされてたなんか、思ってないよ…」


梓紗は、弱気な拓馬を抱きしめた。
拓馬は俯いたまま、涙を拭う。