後ろ姿




「そうやでな、もう…待ってるわけないか」


拓馬は、独り言のように呟いた。

…なんで、今、そんな話するん?
あたしにこれ以上、期待させらんといてよ…。


「あたし…行きますね」


苦しくて、切なくて。

彼の口から、゛失恋゛を思い知らされる単語を聞きたくない…。

梓紗はその場から、走り去った。

涙がどっと溢れてくる。
だが、それを拭う気力なんか…ない。


「夏希……」


携帯の電話帳を開き、夏希に電話をかける。