「まさか、晴樹くんが甘口主義やとは思わんかった」


梓紗は笑いをこらえながら、晴樹を見る。


「っお前、みんなに言うたら覚えとけよ」


「はいはい」


なんて言い合いをしながら、タクシーはマンションの前でとまった。

晴樹はマンションを見上げると、「俺よりでかい」と呟いた。

そんな晴樹を横目に、エレベーターに乗った。


「何階?」


「9階」


徐々に部屋に近づくにつれ、緊張感が溢れてくる。
今住んでるマンションに、男の人を入れたことがない。
まぁ…力也くんとかを除いて。