後ろ姿




「まぁ…ダッシュで行ったら余裕」


相変わらず適当な彼。


「あたしが買ってくるんで、戻ってください」


晴樹の前で立ち止まる。
そして、振り向かせて背中を押した。


「相変わらず…鈍い女やな」


晴樹は振り向かずに、はぁっと溜め息をついた。


「まぁ、鋭いやつよりマシやけどな。
 …気つけろよ?」


晴樹は背を向けたまま、手を振って店の方へ戻って行った。


あたしは、…鈍いんじゃない。
ただ、気づいてないふりをしてるだけ。
だって、晴樹くんの気持ちには答えられないから…。