「なんで、来た?」


「……迷惑?」


拓馬は黙ってしまった。
何も返事をしない彼に、苛立ちがこみ上げる。
…梓紗は立ち上がった。


「あたし、ずっと会いたかった。
 ルイさんに会いに行ってから、ずっと連絡取られへんし…。
 心配してたんやで!?」


「ごめん…」


「あのとき…、ほんまは、よかったなんか…言いたくなかった。
 でも、拓馬くんにとっては…。
 拓馬くんが幸せになってほしいっていうのは、今でも変わらへんよ…。
 ルイさんと……会えてよかったね」


これで会うのは、最後。
もう、会わない。

あたしの気持ちは、まっすぐ拓馬くんに向いている。
でも、拓馬くんはきっとルイさんのことが…。


部屋を飛びだし、玄関に向かう。
頬を涙がつたい、視界もぼやけてきた。