マンションの部屋の前で、立ち止まる。
呼吸が荒く、鼓動は早まっている。
…息を整え、乱れた髪を直した。
思わず走って来たけど…スウェットやん。
しかもスッピン。
…どこか冷静な自分を、保とうとする。
深く息を吸い込んで、インターホンに手を伸ばした。
あと数センチ…。
ゆっくりと、確実に距離を縮めていく。
そして、インターホンが鳴り響いた。
インターホンに、カメラ機能がなくてよかったと少し安心した。
…部屋の中から、廊下をバタバタと走る音が聞こえてくる。
音はどんどん近づいてきて、そして、扉の向こう側で止まった。