後ろ姿




そこで、ルイは口を閉じた。
彼女の口元は、微かに震えている。


「話してくれて…ありがとうございます」


ルイは、首を横に振った。
そして、微かに笑った。


「もし、私のせいで、拓馬に遠慮してるんやったら…それは違うと思う。
 もちろん、私に遠慮してても、それは違う。
 ……もう、私たちは終わってるんやから」


ルイは眉をピクリとさせた。
彼女は…嘘をついている。

゛終わった゛なんか、きっと本心で思ってない。


「ルイさんこそ…あたしや拓馬くんに、遠慮しないで…」


「梓紗ちゃんは、まっすぐだね…。
 拓馬が惚れる理由が、分かるわ」


ルイは立ち上がると、梓紗の頭を撫でた。
そのときのルイは、すごくきれいで…でも、どこか幼い顔をしていた。


「拓馬の居場所は、ほんまに…分からん。
 でも、あんたらなら、きっと会えるよ。
 1つ…約束してくれる?」


ルイが、幼い子どものように、小指をつき出す。