後ろ姿




何も答えない梓紗の手を引き、屋上の階段をかけおりる。


「待って!! あたしは…行かれへんよ」


掴まれていた腕を振り払う。

会いに行けるわけがない。
会ったら、何を言えばいいのか分からない。
会っても、「久しぶり」なんか言えるほど、勇気がない。


「大事なんは…会いたいか、会いたくないか。
 この二択に、すべてがかかってる」


それだけ言い残し、龍は歩いて行った。


会いたいか、会いたくないか。

───答えは、すぐに出た。

………会いたい。
会って、話がしたい。

でも、何を話したらいいん?
ルイさんといる彼を見たら、立ち直れる気がしない。