「利用されたなんか、1回も思ってない。
…あのとき、俺のことは好きじゃなかったん?」
好きじゃなかった…といえば、嘘になる。
拓馬くんを忘れるために、利用した部分もあったけれど…龍くんのことが、好きだった。
多分、あのまま拓馬くんと会わなかったら、ずっと龍くんと一緒にいたはず。
でも今は、正直に話せない。
話したら、余計に期待をさせてしまう。
「…好きじゃなかった」
嘘がバレないように、視線を逸らす。
龍は腕の力を抜くと、背を向けた。
「…じゃあ、東京行こう」
「えっ……」
「そんなに好きなんやったら、東京行こう」
東京……拓馬くんに、会いに?


