後ろ姿




最終的に行きついたのは…拓馬くんの話。
正直、この話はしたくなかった。
でも、いつかたどり着く話で…隠したくない。


「拓さん、東京行ったんやって?」


小さく頷くと、何かを感じた龍は黙った。
梓紗が話し出すタイミングを、待つかのように…。


「ルイさん、生きてるんやってな。
 拓馬くんが、自分から居場所教えてって…そう言った。
 …やっぱり、ルイさんには敵わん」


泣かないように、涙をグッとこらえる。
わざと明るく接し、笑った。


「近くにおらんかっても、心の距離は変わってない。
 そんな2人の間に、隙間なんか…」


「好きやから会うって…拓さんは言ったん?」


好きやから会う…、そうとは言ってない。
ただ、生きてると分かったから…純粋に会いたいと思ったのだろうか。


「…でも、会いたいのには変わらへんよ」


゛会いたいのには変わりない゛。
拓馬くんが幸せなら…それでいい。
向こうでルイさんと仲良くしているなら、それでいい。

あの日から、自分にそう、言い聞かせてきた。