状況が理解できなくて、頭が真っ白になる。


「全部、やり直すって。
 一からまた…始めるんやって」


それは、あたしのことを…忘れるってこと?
みんなと一緒に過ごせることは、もうなくなるん?


「あたし……会いに行く」


部屋を飛びだし、拓馬のマンションへと向かう。
彼のことだけを考え、走り続けた。


「えっ…」


インターホンを鳴らすと、拓馬は扉からひょっこりと顔を出した。
拓馬は、驚きを隠せなくて目が点になる。


「…どないしたん?」


冷静さを取り戻すため、平然を装う。


「引っ越すって、ほんま?」


いざ顔を合わせると、まっすぐ彼を見ることができない。


「…そのことで、来てくれたん?」


「…うん」