「さっきの話…聞いてたよな?」


拓馬は気まずそうに声をあげる。
黙って頷くと、彼は、まずそうに頭をポリポリ掻いた。


「あんな…」


「追いかけてこんといてよ」


拓馬の言葉を遮る。
話を、聞きたくない。


「あずが…逃げるから」


「あたしのせいに、せんといて」


涙が溢れそうになるのを、必死にこらえる。


「さっきの話、聞いてたんやったら…分かるでな?」


「…聞きたくない」


曖昧にされたくない。


「それが、あずの答え?」


あたしの答えなんか、決まってる。

゛拓馬くんが好き。゛

でも、拓馬くんは吹っ切れてないやん。
今でも、自分を責めてる。
完全に終われてない。

こんな状態で、あたしを選ばんといて……。



ゆっくりと頷くと、掴まれていた腕がほどけた。


「………そっか」


一瞬だけ、切なそうな顔をしたのは気のせいだろうか。
背を向けて、再び歩き出す。

だが、彼は追いかけてはこなかった。