後ろ姿




ドアノブに触れた瞬間、「あず」という単語が聞こえた。
触れた手を離し、立ちつくす。

中から話し声が聞こえ、聞き耳をたてた。


「あんなことしたのに助けるとか…お人好しにも程がある」


「あいつは、そういうやつやねん。
 だから、ほっとけん。
 …てか、運んだせいで、肩いてぇ」


「素直に、好きって言えばいいのに。
 あずを守るにはまだ早いって…何、あれ?」


「っ何で知ってんねん!?
 まさかお前、電話聞いてたな!?」


「全部聞いてしまったわぁ」


「絶対、あずには…言うなよ?」


あたしのことが…好き?
守るにはまだ早い…?

期待が、胸を高ぶらせる。