後ろ姿




「それ以上近づいたら、2人共刺すから」


女の低い声に、龍は立ち止まった。


「ミホ…頼むから、やめてや。
 あずちゃんは、関係ないやんけ」


「うるさい!!!
 あたしとこの女で、二股するから悪いんよ!!」


…………二股?

ミホは涙目になりながら、龍に近づく。
頬にナイフを当て、先端で線を引いた。

龍の頬からは、一筋の血が流れ落ちる。


「俺を刺すのはいいから、あずちゃんには…手ぇださんといてくれ」


龍は無表情で立ちつくす。
痛みなど感じていないような、冷たい目で。