…徐々に近づくにつれ、その人影が誰なのかが分かった。 「龍くん……」 梓紗は少し気まずそうに笑う。 「何してるんすか?」 「夏希に会いに行ってた。 …龍くんは?」 「あー…ちょっとね」 龍は苦笑いしながら、腕を隠す。 とっさに隠した部分から、少しはみ出て見える…手形がくっきりとあった。 頬には、ナイフで切られたような傷。 「たいしたことないし…いける」 龍は軽く頭を下げ、走り去った。 梓紗は引き留めようと、腕をだす。 でも、傷を見た瞬間…腕を引っこめた。