「…っふ。そんな、困った顔すな。
 ……先、戻っててください」


龍は手を離し、彼女を見ずに言った。

梓紗は黙って頷くと、その場を…離れた。


「あれ、1人?」


何も聞かれたくなくて、黙って頷く。
龍くんのあの表情が、…忘れられない。

そのあとすぐ、龍は戻ってきた。
さっきの彼とは違い、いつもの笑顔だった。


「ビーチバレーしょうよ」


夏希がボールを取りだし、膨らます。


「おまっ、ちょっ、俺がやるから貸せっ」


力也はボールを取り上げ、膨らまし始める。
夏希の体を気遣っての行動だろう。


「あずと拓ちゃんもしょうよ」


夏希に腕を引っ張られ、砂浜へと連れて行かれた。

さっきまでいた砂浜は、今は少し…居心地が悪い。
だって、隣には拓馬くんがいるから…。