サンダルに履き替え、ゆっくりと砂浜を歩く。
決してきれいではないけれど、日が照った海は、きれいに見えた。
「入るやつも、おるんやな」
龍は苦笑いする。
海辺をたどって、歩く。
潮風が心地いい。
海の独特な香りがする。
「…俺、ちっちゃい頃、海で溺れてん」
彼はフッと笑いながら、口を開く。
「足つってさ、マジで死ぬかと思った。
情けない話…、あれから海だけは無理」
「意外やなぁ。何でもできそうやのに」
龍は黙って立ち止まった。
腰をかがめ、砂をすくう。
さらさらとした砂は、指の間を通りすぎていく。
龍に近寄り、同じように腰をかがめた。


