「気合い入れてるし、男けぇ?」
いつもより、声のトーンが低い力也。
「教えへんっ。 あっ、時間やし行こ!」
夏希はわざとはぐらかし、梓紗の腕を引っ張る。
…小走りで曲がり角まで行くと、夏希は立ち止まった。
「どないしたん?」
黙って下を向く夏希。
「…誰と会っても、何も思わんのかな」
「えっ…」
夏希は目に涙を浮かべ、それを必死にこらえる。
きっと、心配してほしかったんやな。
言葉の意味を理解し、彼女の背中を撫でる。
「やめとく?」
梓紗の言葉に、彼女は首を横に振る。
…そして、駅までの道のりをゆっくりと歩いた。