彼女は歯を食いしばり、むりやり笑顔を作った。
「渡されへんかったぁ…」
へへっと笑う彼女の背中を、優しく撫でる。
何も言えずに黙っていると、夏希は俯いた。
「…拓ちゃん、来たねん」
「えっ…」
その言葉に動揺してしまい、手が止まる。
「…仕事ない日は、ここに来てるねん。
でもまさか、平日来るとは思わんかった」
゛彼は変わらず、仕事のない日はここに来ていた゛
それを改めて知ったことで、ここに来るべきではなかったことを思い知る。
顔を合わせたわけじゃないのに、心の奥底から…悲しみが溢れだす。
しばらく、ずっと考えてなかった…拓馬くんと最後に会った日のことが、頭の中を過る。


