「…そろそろ、行こかな」
夏希は、さっきとは違う小さな紙袋を持って立ち上がる。
「頑張って」
小声でそういうと、彼女はニコリと微笑み、力也の元に向かった。
夏希が成功しますように…。
心の中で願い、2人が部屋から出るのを見つめていた。
「…あずちゃん」
彼女の横に腰をおろす、龍。
「…久しぶり」
久しぶりに会う龍を目の前に、気まずさと緊張感が押し寄せてくる。
「溜まり場、いっこもけえへんなったなぁ」
一番聞いてほしくないことをさらりと言われ、返事に戸惑う。
わざと…聞いてるん?
「嘘…ごめん。
でも俺、ずっと来てほしかったんやで」
まわりは騒いでいるせいか、こちらの雰囲気などお構い無し。
それはそれで、助かる。


