拓馬は、はぁっと息を吐く。
そして、視線を逸らした。
それでもあたしは、拓馬くんの目を見つめる。


「…俺、一部の記憶ないねん。
 去年の夏…バイクで事故ったから」


どういう…こと?

それは、思いもよらなかった言葉。
驚きを隠せない彼女を気にしつつ、拓馬は話を続ける。



「彼女…ルイっていうねんけどな。
 夏休み、ルイを家まで送る途中に…トラックと正面衝突した。
 俺は助かったけど、ルイは……。
 事故のショックと後遺症で、俺はルイの存在だけ…記憶を無くした。
 …そっから、俺は゛ルイ゛という存在を、今までずっと忘れてた」


その言葉を聞いた瞬間、あることを思い出した。

聞いたことのある名前…゛ルイ゛さん。
拓馬くんの彼女の名前やったんや…。



「…夏希の誕生日の前日、力也が家に来ててん。
 なんとなく中学のアルバム開いたら、…中から写真が出てきた。
 写真は、あずに似てる女と撮ったやつ。
 でも、誰か分からんくて…力也に聞いてもごまかされた。
 …しつこく聞いてくる俺に、やっと話してくれたのが…ルイのことやった」


拓馬は悔しくて、拳をギュッと握る。

あたしは、ここで泣くのはだめだと必死に涙をこらえた。

つらいのは、拓馬くんやねんから…。