「あたしは、りっくんと出とくから。
何かあったら電話して…」
力也が家から出てきて、夏希と歩いてどこかに行ってしまった。
…しばらく玄関で立ちつくす。
頭の中に、龍くんの顔が浮かんだ。
行こう…かな。
いつまでもここにおったら、意味ないよな。
せっかく背中、押してくれたんやもん。
階段を上がり、拓馬のいる部屋の前で深呼吸する。
ドアを開けると、拓馬の姿が目に入った。
背を向けて、俯いている。
「拓馬くん…」
名前を呼ぶと、彼はこちらを向いた。
驚きを隠せない様子で、まじまじと見つめられる。
とりあえず、拓馬の向かいに腰をおろした。
緊張してしまい、彼とは違う方向に目をやる。
「久しぶり…やな」
重たい空気の中、拓馬が口を開いた。
それに頷くも、気まずさにたえられない。
「夏希やったら、力也とどっか行ったで」
うん、知ってる。
二人があたしに気ぃ使ってくれてんやもん。
話しやすいように、二人にしてくれた。


