「龍は…怒ってる?」
笑花の声は震えていた。
急に何を言っているんだろうと俺は目を丸める。
その言葉の意味は何となく理解した。
笑花はあの事故の事を言っているのだ。
あの事故はもともと、俺が引かれそうだった。
それを笑花が庇ったのだ。
笑花が昏睡したのも俺のせいだ。
何度も悔いたし、涙を流した。
笑花の両親は俺の顔を見てくれない。
笑里は俺を支えてくれたけけど、両親と俺の狭間で苦しんでいたと思う。
だけど…
「怒ってない。むしろ…俺が謝るべきだ。笑花が今まで目覚めなかったのは俺のせいだから…」
俺の言葉に笑花は首を横に振る。
「そんなことない。あたしが…自分でしたこと。龍を失いたくなかった。自分でも驚いたくらい。何も考えずに飛び込んでいた」
まるでつい昨日のことかのように笑花は話し出す。
笑花の記憶はあの事故で止まっているのだ。
俺の消えない記憶は笑花に鮮明に記録されている。

