「…まだ彼女さんは目覚めないんだね」
「…あぁ」
龍先輩の声が暗い。
この話はしない方が良かったとあとで後悔した。
龍先輩はどんな話でも動揺しないから、ついこんな話をしてしまう。
「でも…少し安心している自分がいる。もしあいつの目が覚めたら…俺はどうしたらいいかわからない」
龍先輩には似合わない弱音
龍先輩には龍先輩の葛藤があるんだろう。
「ただ単純に喜んじゃダメなの?」
「喜びたい。抱きしめたいって思ってるけど、そうできるかわからない。もしかしたら、『ゴメン』ッて謝るかもしれない」
「…そっか」
龍先輩のせいで笑里のお姉ちゃんは事故に遭った。
そう思われて、龍先輩も辛いんだろう。
でも、『ゴメン』と言われた彼女はどう思うのかな?
きっと…そんな姿は見たくないと思う。
「ゴメンって謝っても、そのあと目覚めたことを喜んだらいいんだよ。彼女さんは…真っ先に龍先輩の顔を見たいと思うよ?」
「…だといいけどな」
龍先輩の彼女が目覚めること。
龍先輩も笑里も望んでいる。
だけど…あたしの中には何とも言えない気持ちがあった。

