「…ありがと」
あたしがお礼を言うと、彼女は微笑み前の方を真っ直ぐと見た。
あたしは前を向き直し、校長先生の話を聞きながら、友恵にちゃんと話そうと考えていた。
「友恵、さっきはごめんね」
あたしは教室に向かう廊下で、小声で友恵に謝った。
すると友恵は「何が?」と首を傾げた。
「ちゃんと話さなかったから…怒ってるんでしょ?」
「…何、言ってるの?」
「廊下のことだよ」
あたしがそういうと、友恵は今まで忘れていたのか、あぁと呟く。
「…怒ってないよ?話してくれなかったのがちょっと嫌だっただけだし」
それを聞いて、あの子が言っていた通りだと思った。
友恵が怒ってないと知り、あたしはほっと胸を撫で下ろした。
「…よかった。友恵と話せなくなるの嫌だもん」
「…それはあたしもだよ」
友恵が恥ずかしそうに、ぼそっと小さな声で言う。
いつも表に出さない友恵の気持ちが聞けて、笑みが零れた。
あの子にお礼が言いたかったが、教室に彼女はいなかった。
あたしの後ろに座っていたから同じクラスのはずだ。
だけど、彼女の姿は教室にはなかった。
帰るときまで、彼女は教室に現れなかった。

