僕らは傷つきながら恋をする。




その日の夜、笑里から電話があった。
笑里は穏やかで何処かふっきれたように落ち着いていた。



「…後悔なんかしてない。あたしのこの想いは龍くんに届いて…無駄じゃないって分かったから。今は…お姉ちゃんが目覚めることを願ってるよ」



振られたとは思えない強い前向きな言葉
笑里は…もう前を向いているんだ。
あたしはふと、蓮先輩のことが気になった。



「笑里、蓮先輩のことは…」



「…あぁ。ちゃんと断った。やっぱり…こんな気持ちで蓮くんと付き合うなんて、駄目だから。蓮くんのこと…心から好きになれたら…付き合いたいって思ってる」



「笑里は…強いね」



もう前を向いている。
しゃんとした笑里の姿が目に浮かぶ。



きっと…あたしだったら、無理だ。
何日も引きずってしまう。



何年も想いを寄せて来た。
好きという気持ちは…簡単には諦められない。



あたしがそう話すと、笑里は電話口でくすっと笑う。



「何処かで…無理って分かってたから。朱羅はあたしのこと、強いっていうけど、龍くんにとっては『強がり』だったんだよ。だから…妹ととしか思われてなかったんだろうな…」



長い付き合いの龍先輩にしか分からない笑里
付き合いの浅いあたしとは全然違う。



笑里の強さは強がり
前を向いているように見えて…前を向かなきゃ平常でいられないってことなのかな。



「ねぇ…笑里。友恵って…龍先輩のこと、好きなのかな?」



あたしはふとそんなことを笑里に尋ねた。
傷心の笑里にこんなことを聞くのは、デリカシーがないって分かってるけど…
つい、笑里が普通だからそんなことを尋ねてしまっていた。



長い間、間が空く。
話すことをためらっているかのように。



「…だと思うよ。友恵は何も言わないけどね。…朱羅もでしょ?」



「…えっ?」